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"La danse" - 邦題「パリ・オペラ座のすべて」 と、スト考

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ストイックに伝統を守りつつも新しい舞踊を追求するオペラ座バレエ団とそのダンサーたちというのはどうやら映画人の強い興味をひくようで、ダンサーやバレエ団全体を追ったドキュメンタリーというのは少なくない。
今回はドキュメンタリー映画の巨匠(だということだ、私は映画には詳しくないので知らなかったが)フレデリック・ワイズマンがオペラ座バレエ団に密着したということだ。
密着期間は85日間にもおよび、フィルムは135時間にもなったものを編集したとのこと。
結果は3時間近い大作。クリシーの映画館で体力を使い果たす。

作品として出てくるのは主に「くるみ割り人形(ヌレエフ版)」「ベルナルダの家(マッツ・エク)」「パキータ(ラコット)」「ロミオとジュリエット(サシャ・ワルツ版)」「Le songe de medee(プレルジョカージュ)」「Orphee et Eurydice(ピナ・バウシュ)」など。これらの作品のリハーサルから上演までを追っている。

映画はナレーションなしで進む。
ワイズマンの手法なのだそうだ。ナレーションがあると観客と「事実」との間に壁が出来てしまう、だとか。
「○○のリハーサル」という程度の字幕はつく。
しかし、誰が誰という説明は一切ない。
私はこう言うのもなんだがオタクなので、芸術監督は当然のことmaitre de ballet から若いダンサー、果ては団お付きのピアニストまでほぼ全員の顔と名前が一致するが、これ、分からない人にはどうなんだろうか。
役職と名前くらいつけてあげてもよいのでは、と思ったが、それもダメなんですかね、ワイズマン氏。

こうした手法から、ドミニク・ルルーシュやニルス・タヴェルニエなどが「オペラ座、love!」というファン目線に近いのに比べ、ワイズマンがドキュメンタリーの一つの題材として、オペラ座を選んだにすぎないのではないか、という印象を持つ人もいるだろう。
しかし結果的には、団に関わる人々の、凡人には共感しえないほどのストイックさと、厳しい鍛錬、強い思い、などが感動を生み出したのではないだろうか。・・・と期待するのは私がやはり相当このバレエ団が好きだからか。


現在、パリでは美術館などを中心に人員削減策に反対するストが続いている。
オペラ座も過去、年金改革などに絡み大手組合がストを行ったために、大道具も舞台装置も、果ては衣装までなし、という舞台に私は何度も立ち会っている。
しかし、必ずダンサーは出てくる。オケがストで音楽がないために上演できなくなったときを除き、絶対に彼らはストをしない。
踊れるチャンスがあれば踊りたいからだ、とあるダンサーがインタビューで言っていたが、その強い思いが、この日々の訓練から伝わってくる。

この映画で、非常に感銘を受けたのは、ブリジット・ルフェーブル芸術監督の言葉だ。
年金改革について組合代表がダンサーたちに説明している場面で。


「我々が出来ることは、日々とにかく鍛錬を積むことです。それが、我々の”力”になるのです。」


ストではなく、その厳しい鍛錬と追求精神から生まれた高いレベルの芸術を見せていくことこそが、存在意義を示すことになる、というわけだ。


私はここで非常に感動した。


技術的には同じレベルのバレエ団は他にもある。しかし、総合舞台”芸術”としてのバレエをこのレベルで見せるバレエ団は世界にも類を見ない。その真髄を見た気がした。



ちなみに、3時間近くは私にとってあっという間だった。
コアファンにはたまらない映画。
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by chihiroparis | 2009-12-06 10:37 | cinema | Comments(0)
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