saison 2009-2010 La dame aux camelias (2010/2)

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9月。オペラ座、2010-11年シーズンが始まろうとしている・・・!
大慌てで2009-10シーズンの鑑賞記録を終えなくては。

順を追わずに、印象に残った順から。まずはもちろん、ノイマイヤー「椿姫」から。

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何度もこのブログでも書いていることだが、ノイマイヤーの「椿姫」によって、私のショパン観は変わってしまった。
つまり、有名で聴きなれた、いや、聴き飽きたほどのあの名曲たちが、もはや「そのもの」として耳に入ってくることはなくなり、脳内に「椿姫」の各場面が再現されるようになってしまったのだ。

そのくらい、ノイマイヤーのショパンを使った振り付けは強烈だったということだ。
今、世界中のバレリーナたちがもっとも踊りたい作品、言われることからも、この作品がバレエ界に与えたインパクトを想像するのは難しいことではない。

原作はかの有名なデュマの「椿姫」。
オペラなど数多く舞台化されたこの作品、バレエでは、こうだ。
舞台はパリ。高級娼婦だってマルグリッドの死後、競売の場面から舞台は始まる。
最後病で死んだ彼女の家に大した家財はない。
ここに、青年アルマンがやってきて、回想をする形で物語は進む。

高級娼婦マルグリッドに恋をしたアルマン。
彼らはほどなくして強く愛し合う(ピアノ・コンチェルト第1番、2楽章)。
が、身分違いからアルマンの父から息子と別れるように言われたマルグリッドは、パトロンLe Ducとの生活を選ぶ。
失意のアルマン。そして、病にかかり落ちぶれたマルグリッド。再会し、激しく愛し合う二人(バラード1番でのパ・ドゥ・ドゥ)。
その後の舞踏会で、アルマンは、彼女のことを想いお金を渡すも、マルグリッドを傷つけることになる。
(「華麗なるポロネーズ」を使ったこの場面の何と劇的なこと・・!)

こうして物語が進む中、主人公の心情を映し出すものとして重要な役割を果たしているのが、劇中劇の「マノン・レスコー」である。マノンがマルグリッドを、デ・グリューがアルマンと、絡みながら踊る。

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オペラ座のレパートリーに入って以来、この作品に心を奪われた私は、何度も何度も、熱に浮かされたように様々な配役でこの作品を観てきた。

今回は、
アニエス・ルテスチュ/ステファン・ビュリオン
デルフィーヌ・ムッサン/バンジャマン・ペッシュ
クレルマリー・オスタ/マチュー・ガニオ
オーレリー・デュポン/イリ・ブベニチェク(ドレスデンバレエ)

の4組を観た。

もっとも衝撃を受けたのが最後のオーレリー/イリの二人。
ノイマイヤーのお膝元、ハンブルグバレエに長く在籍し現在ドレスデンにいるイリ。
イリのアルマンは、ひたすらに情熱的だ。
マルグリッドへの愛を表現することにまったく躊躇がなく、オペラ座の美男子ダンサーたちよりもより男性的な役作り。全身からこれでもか、と溢れるマルグリッドへの感情に、見ているこちらがマルグリッドになったかのような気持ちになり心臓がバクバクと脈打っていた。

イリに強く引かれるように、オーレリーのマルグリッドも、いつものオーレリーらしからぬ熱さを見せる。
こんなにも、つま先一つで、愛情・怒り・哀しみ・・・・・といった様々な感情を表現できるダンサーはいるだろうか?指先の使い方一つで躊躇を、怒りを、愛しいと思う心を人は表現できるものなのか・・・?
彼女がその最高潮にあったのが、アルマンの父が会いに来た場面である。衝撃的だった。

そして2幕のバラードの1番によるPDDでの愛の再確認。
1幕のPDDと共に印象的に使われるのはアン・オーにした手を深く相手に向けて下げ、愛しています、とひれふすように告げるところだ。これが1幕ではアルマンからマルグリッドに贈られるのだが、2幕のこのPDDでは立場が逆転し、マルグリッドが行う。
これにより彼女のアルマンへの愛情が表現される。
病にかかり美は衰えたマルグリッドのするこの振りは哀れだ。
イリとオーレリーは、二人がいまだ狂おしいほどに愛し合っていることを全身で表現する。
とり付かれたような人への愛を視覚化するとこんな感じだ、と毎回この場面を見て私などは思う。

続く、舞踏会での場面。
どうしようもなくいまだマルグリッドを愛しているアルマンが酔って荒れながらマルグリッドに絡む場面。哀しさを滲ませながら狂おしい想いを乱暴に表現するイリに、完全にやられた・・・・!


オーレリーがマルグリッドを踊ったのは公演も終盤だった。
それまで、ムッサンの細い身体から搾り出すようなその愛情表現、アニエスの静かながらも染み出してくるようなその感情表現、と心をゆすぶらされる舞台ばかりだった。
しかし、相手役のイリがオペラ座男性陣とは格が違ったためか。最後に観たこの配役に心打たれたのであった。
それでも、DVDにもなったステファン・ビュリオンのアルマンは一言記録しておくべきだろう。
上半身の硬さはどうしても目につくものの、お芝居が上手く、いわゆるボー・ギャルソンのステファン。
それに、昔から感情表現にかけては定評のあるバンジャマン・ペッシュも忘れてはいけない。
残念だったのは、立っているだけで王子様ができるはずのマチュー・ガニオ。
いっぱいいっぱいだったのだろうか。相手役のオスタはとてもいい演技をしていたのに、まったく彼女と呼応しあってなかったように私の目には見えた。


それにしても充実した配役。
欲を言えば、エルヴェ・モローが怪我でまたもやアルマンを踊れなかったのが残念でならない。
彼の端正なのに情熱的な踊りのアルマンは他の人には真似できないものだったろうに。

脇ではデ・グリューのジョゼが素晴らしい踊りで、アルマンを映し出す鏡として時に道化のような哀しみを演じ
ていたのが印象的。

ちなみに今回でアルマンの父役をずっと踊ってきた往年のエトワール、ミカエル・ドナールが引退した。

とにかくこんなロマンチックで素敵な舞台を生み出してくれたノイマイヤーに感謝どころかビズを贈りたい気分である。私の今までのバレエ鑑賞人生の中で一番好きな作品だと間違いなく言おう!
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by chihiroparis | 2010-09-03 08:24 | ballet+danse | Comments(0)

主にバレエ評


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