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Sylvie Guillemシルヴィ・ギエム引退公演 Life in profress @TCE

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100年に一度のダンサーなどと評されることも多いシルヴィ・ギエムの引退公演「Life in progress」最終日。そのタイトルの通り、常に開拓者であり革命者でありあるいは反抗者?でもあり、前に進み続けたギエムらしい、まったく懐古的な面のないという潔いプログラムだった。50歳の彼女の「今」を見せるという斬新なもの。プログラムは、Techné(アクラム・カーン)、Here&After(ラッセル・マリファント)、Bye(マッツ・エク)の3作を本人が踊り、間にDuo2015(フォーサイス)をフォーサイスカンパニーのダンサーが踊った。
クラシックバレエをまだ踊っていた頃から現在に至るまでの彼女の数々の舞台を思い出しながら、この人はその出来すぎた身体(もちろん本人の努力にもよるものだが)で表現できるものがもっとあるのではないか、と常に挑戦し続けた人だったなと考えた。
その脚は上げてるんじゃなくて上がってしまう。彼女を見ていると、上がったものではなく上げようとするその力学に美ってあるんだなと気づいたし、何をやってもあまり表現者として魅力的だと思ったことはなかった。ただただ、その並外れた身体と驚くべきレベルに磨かれた技術のほうに感動を覚えたものだった。ロイヤルで演劇バレエを踊るも、女優としてはあまり魅力的だと思えなかった。だからクラシックを離れてコンテンポラリーを中心に踊るようになってからのほうが、彼女は自分の身体から生まれる表現の可能性にもっと挑戦しているようで、魅力的だった。
カーンの作品では地を這い魂を外に吐き出すように内なるものを発信しようとしていた。無機質な、というのが彼女への褒め言葉でもあり同時に批判的評価でもあったと思うが、決してそんなことはないと内臓までさらけだしたように踊った。
同じ激しさでも一転、マリファントの作品では、いわゆる彼女の体操的に秀でたもの、極限の身体性で魅せる。この人がこれでもう引退をするとは考えられないような、今でもその辺の若手ダンサーには到底真似できないような身体・筋肉の動き。ひたすらギエムの身体を創造物として楽しむのはこの作品だろう。
マッツ・エクの作品は、2年前のギエム公演の再演。これを見ながら考えたことは、パートナーに恵まれなかったダンサーだなということ。孤高ゆえに孤独のダンサーだった。それはもちろんその身体が他の誰もが組めないほどに突出して秀でていたから。踊りはバランス。ルテスチュのようにダンサー生涯この人ひとり、というような貴重なパートナーシップを築ける相手に出会い、歴史に残るInterpretationを残す人たちもいれば、いろんな人と組んで様々な魅力を出してキャリアを終える人もいる。いろんなタイプがいていいと思うが、なんていうか、この人に本当に匹敵する男性ダンサーがいたら、どうだっただろう、と思うのだった。そして、国家的損失とも言われたけれども、あのままロイヤルに移籍せずにオペラ座にいたらどうだったのかな、と。女優的に開花する彼女を見たかった気もする(ロイヤルでアシュトンを踊ったりももちろんしていたわけだが)。
エクの作品は、出演は彼女だけなのだが、映像で幾人もの人が出てくる。最後はその人たちの中に彼女が一緒に混ざって、消えていく。彼女の孤高すぎたキャリアを振り返りながら最後にそういう締めで終わったこの作品のラストが、心にしみた。振付家に与えられたものを通し表現するもの、振付家と自らコラボしに出かけ何かを表現しようとするもの、古典作品の中で自分だけの表現をしようとするもの、いろいろいると思うしキャリアはその一つだけでなされるものではないが、彼女は、こういう言い方は勝手かもしれないが、おそらく自分の身体を明らかに"持て余していた"と思うし、そのため振付家のところに積極的に出向いていきその身体が挑戦できる表現を自ら開拓していた。表現への挑戦とアンガージュモンとをし続けたダンサーだったと思う。その意味で、主張は受け入れられないけれども、シーシェパードの件も、最後の舞台においてもそんなブースが会場に出ていたのも、なんだか彼女らしいと思った。
スタンディングオベーションが続き長い長いレヴェランス。彼女を体操のオリンピック選手養成コースからオペラ座バレエ学校に引き抜いてきたベッシー女史が花束を持って現れる。最後に、サプライズ。係りの人に導かれ舞台袖の椅子に座るように言われ彼女が座ると、出て来たのはギヨーム・ガリエンヌとニコラ・ルリッシュ。カリギュラでドラマトゥルグとしてニコラとコラボしたガリエンヌによる朗読。ニコラが、彼女と最初に踊ったというドンキホーテのバジルの最初のヴァリエーションを朗読にのせて踊る。そして最後に「僕たちはシルヴィのおかげで出会ったんだ」と締められる。ギエム、ここで感極まって泣いていた。感動的な瞬間だった。
かつてのパートナーとしてはイレールもきていた。思い出すなぁ、ロイヤルに移籍した後、ゲストでマノンを踊りにオペラ座に来たときに組んだ相手はイレールだった。1幕で馬車から降りてくるマノンの出の場面でのギエムの光り輝いていたこと。フォーサイスのIn the middleで物議を醸したのもイレールとでしたね。なかなかこの二人も切れ味が合ってていい組み合わせだった。やっぱりオペラ座に残ってもっといろいろ踊ってほしかったかなという気もオペラ座ファンとしてはしたけれども。本当にしかし、常に引退まで前衛でいたという粋なダンサーだった。
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by chihiroparis | 2015-10-20 16:21 | ballet+danse | Comments(0)
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