バランシンが1962年、NYCBに振り付けた作品。オペラ座では今回初のレパートリー入りとなった。
文学、芸術の力ってすごいよねとつくづく。男女のなんだかんだなんて全て神様のいたずらで起こってるようなもんね、悩んでないで笑い飛ばしていこうね、俯瞰してクスりとして、はい人生楽しもうと思わせるシェークスピア真夏の夜の夢バランシン流。とっても幸せで優しい気持ちになる観劇後。
バランシンがこんな作品を作ってたのも驚きだった。子供も大人もクスクス笑いながら楽しめる、でも誰かが言ってた「ディズニー的」というのとは全然違うやっぱりこれは上質なバレエ。
こんな愛に溢れた素晴らしい作品があるんだよとプログラムに入れて初めてオペラ座のお客に紹介しようとしたミルピエはやっぱりたくさんの作品を見ていると感じるし、本人の作品を推しすぎたというあの点がなければ、本当にディレクターとして素晴らしい選択眼があったと思う。今さらですが。
演劇的要素の強い一幕で話はまとめてしまい、それとバランスを取るかのように、結婚式という設定でディベルティッスマンだけで踊りを見せる二幕。眠りの森の美女など19世紀クラシックバレエの構成と同じ。大変見ごたえのある作品、これからも再演を重ねてほしいと感じた。
衣装はクリスチャン・ラクロワ。厳しいバランシン・トラストの制約の中でさすが、の美しい衣装たち。
配役だが、日本公演が重なっていたため、日本組以外のカンパニー総出という印象。放映用に録画のあった日にはベテラン勢多めでさすがの演技力、他の日では若手起用によりいきいきとストーリーが描かれた日もあり(特にパックが若いと、動きがすばしっこく、観客の笑いを誘う)、どの日も違う味わいがあって楽しめた。驚くほどどの配役も本人の良さが引き出されていて、ここ最近の配役はどの作品でもそうなのだけれども、ディレクションが実によくダンサーのことを見ているし理解しているし、愛がある配役だなということ。オペラ座に80年代以来の黄金期がまさに訪れつつあることを感じる。
直前に日本でエトワール任命されたユーゴ・マルシャンの類稀な演技力など各ダンサーについては色々書き留めておきたいところだがきりがないのでやめておくが、どうしても記録しておくとすればレティシア・プジョル(Hermia役)。技術力は誰よりも抜きん出ていたダンサーがドンキホーテのキトリでエトワールに任命され、その二年後のドンキホーテに出てきた時には、任命された作品とあって気負いすぎていたのか歌舞伎調ですらある見栄切りの多い踊りに辟易すると同時にその後が心配になったものだが、今は素晴らしいコメディエンヌだなとつくづくこの作品で再認識した。